ベトナム恋愛宣言
2014/11/06 Thursday
第三話 のびたは新たな恋をする夢を見るか?
あのミミちゃん事件から数ヶ月が過ぎようとしていた。
それからというもの、のびたはすっかり腑抜けてしまい、上司に怒られる回数も両手じゃ足りないほどになっていた。
「女ってやつぁ…」
今日も今日とて外で風を感じながら、流れる雲をぼーっと眺めていた。
つまりサボりだ。
「ノビサン、仕事ハシナクテイインデスカ」
「良いんだよほっといてくれよ…」
「イイノカナア…」
広大な空を仰ぎながら、ミミちゃんのことを考える。彼女は自分に気などなかったんだ…
そのことを思うだけで、胸が張り裂け…そうにはならなかったが。
最近サボりが目立つ上司であるのびたにぶつぶつ言っている従業員を尻目に携帯をいじるのびた。
一通のメールがきていた。送り主はどうやらベトナムに住む知り合いからのようだ。
こんな時間に一体なんの用だろう。
『今夜飯に行かないか?行きつけの良い店があるんだ』
「…」
少し考えてから、荷物をまとめた。上司から連絡が来ているパソコンは無言でシャットダウンした。
それから職場を後にして、家―ベトナムの宿舎―へと駆けた。
「ノビサン!!仕事ドウスルンデスカ!!」
ベトナム人スタッフの制止も虚しく、今夜の準備をすべく、退社したのだった。