ベトナム恋愛宣言
2014/10/02 Thursday
第零話 のびた(仮)のベトナム恋愛宣言。
(BGM) 恋に落ち―てゆくふたーり 愛をかさーねるふたーり…
―ベトナム。
彼はそこにいた。彼の名前はのびた。勿論ニックネームだ。
昭和56年生まれの独身で、トレードマークはドラえもんの主人公と同じくもちろん眼鏡。
絶賛彼女募集中の至って普通の会社員だ。
そんな彼が何故、日本から遠く離れた地に立っているかというと、それは約五ヶ月ほど前まで遡ることになる。
「のびくん。君には明日からベトナムで仕事してもらうから」
突然の社長からの辞令。ベトナムへの人事異動。つまり海外で仕事をしろと言い渡された。
「マジですか…」
「うん、マジ」
「僕、海外での仕事経験とか無いんですけど」
「大丈夫、サポートはするし」
「いやいや…ベトナム語話せませんし書けませんし」
「そういう文句も出ると思って、もう日本語出来るベトナム人スタッフ雇ってるから」
「ちなみに断るという選択肢は?」
「あると思う?」
「…」
確かに今まで仕事の成果はあまり出せていなかったかもしれない。
でも、だからといってこの仕打ちはあまりに酷いんじゃないのか…。
そうこうしている間にベトナムへ行く日が決まり、のびたはとうとうベトナムへ行くことになったのであった。
「はあ…何で僕、ベトナムにいるんだろうな…」
大きなため息をひとつ吐く。
ちなみにベトナムへ着いてからは、慣れない仕事でよく失敗し、そのたびにスカイプ越しに上司に怒られて、つらい毎日を過ごしている模様。
それだけじゃなく、ベトナムの道路は日本と勝手が違うため、何度も車やバイクに跳ねられそうになったり、土地が体に慣れていないせいか咳が止まらなくなったり、強烈な腹痛に襲われたり。
お小遣い稼ぎに勝手にサンダルを仕入れてこっそり売ったり(このせいで上司に怒られたことは言うまでもない)…とにかく毎日がとても忙しかった。
「ドラえもん…もう僕…日本に帰りたいよ…」
こんな世迷言を言ってしまうくらいには参っていた。